平成7年度
THPにおける運動及び余暇活動の実態
主任研究者 富山産業保健推進センター相談員 金 清
共同研究者 〃 所 長 広瀬 友二
〃 相談員 鏡森 定信
〃 相談員 篁 靖男
〃 相談員 藤沢 貞志
〃 相談 川向 文夫
〃 相談員 室 一
1.はじめに
成人病(生活習慣病)の一次予防として、よい運動習慣が有効であることが定説となっている。そこで今回は富山県下の中小規模事業場に勤務する労働者の実態を調査検討しTHPの指導に役立てることを目的とする。
2.対象と方法
運動習慣に関するアンケートを事務及び製造業を中心に従業員50人以上から300人以下の事業場に依頼した。アンケートはすべて無記名として実施した。事業場には後に当該事業場の集計結果を還元することとした。配布した事業場は、111事業場、総配布枚数11,918枚、有効回収数は、9,999数(回収率83.9%)であった。この約1万枚の調査結果を性(男、女の2群)、年齢階級(40歳未満と40歳以上の2群)、作業形態(座作業と立作業の2群)別に集計した。ここで座作業とは(腰をかけて仕事をすることが多い)と回答された群を指し、立作業とは(立って仕事をすることが多い)と回答された群をさすことにした。業種のうち主な4つ(建設業、製造業、運輸業、サービス業)について業種別に主な運動習慣等について集計した。
3.結果及び考察
まず、性別では男は6,148人(62%)で女は3,759人(38%)であった。年齢階級では10才代は112人(1%)、20才代は2,088人(21%)、30才代は1,965人(20%)、40才代は3,143人(32%)、50才代は2,132人(23%)、60才代は350人(4%)であった。運動の結果をみると性別の比較では、性別では差はほとんどみられないが、年齢階級別では40歳以上によく効果が出ている。しかし40歳未満では、もともと改善するような症状を有していなかったとも考えられる。いずれにしても運動でかなりの効果を認め身体的にもメンタルヘルスの面にも有効な影響をもたらしているといえそうだ。
具体的な数字を上げれば、
気分が爽快になった 84.0%
よく眠れるようになった 77.4%
食欲がでてきた 75.4%
身体が軽くなった 64.9%
風邪をひかなくなった 56.4%
肥満防止に役立った 55.1%
イライラしなくなった 50.6%
便秘がよくなった 50.1%
となっていた。
作業形態別の比較では、運動の効果があると答えた割合は座作業で目立ち、立作業で効果を認めていない割合が多かった。
つまり座作業で運動しているのが多いという傾向があり、座作業で運動の効果ありとする者が多かった。しかし、座作業と立作業の運動の差がその座作業より業務で不足している分を補っているかというと必ずしも充分ではないようにも思われる。
また、運動効果で50%以下しか「はい」と回答しなかった項目についても、運動時間、運動効果、年齢別に組み合わせて分析するとかなりの効果をみていることが分かった。
例えば、「腰痛がよくなった」は全体では37%であったが、40才以上において1回の運動時間が30分〜60分程度、週に3〜4回行った群では78%と効果がみられていた。
「胃部不快感がなくなった」は全体では47.9%あったが、40才以上において1回の運動時間が30分〜60分、週3〜4回では80.4%の人が効果がみられたとしていた。
「健診結果がよくなった。」は全体では35.5%であったが、40才以上において1回の運動時間が1時間以上、週3〜4回の群では78.3に効果に効果がみられていた。
「何事に積極的になった」が全体では41.3%であったが、40才以上で1回の運動時間が1時間以上、週3〜4回の群では76.2%が効果ありと回答していた。
「疲れなくなった」は全体では32.2%あったが、40才以上において1回の運動時間が30〜60分、週3〜4回の群では65.9%が効果ありと回答していた。
さらに、「身体を動かしても息切れしなくなった」は全体では46.2%あったが、40才以上で1回の運動時間が1時間以上、週3回以上の群では、85%が効果ありと回答していた。
調査の結果をまとめると40才以上において週3〜4回の運動を行っている群でかなりの運動効果がみられるという事がわかった。
この結果を今後の中高年のTHP活動に活用したいと思う。