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研究・調査

富山産業保健総合支援センターの調査研究コーナー

平成12年度
富山県内の事業場におけるメンタルヘルスケアの取り組みについて
主任研究者 富山産業保健推進センター相談員 平野 正治
共同研究者     〃       所 長 宇野 義知
          〃       相談員 鏡森 定信
          〃       相談員 角田 雅彦
          〃       相談員 村上 千恵子

1.はじめに
 富山県厚生部健康課の平成10年度調査によれば、県内労働者の76.8%が「神経の疲れ」、66.2%が「仕事や職業生活にストレスがある」と回答している。
 今回、平成12年度産業保健調査研究として「富山県内における労働者の「健康づくり」及び「メンタルヘルス対策」の取り組み状況について」のアンケート調査を行ったので報告する。

2.対象と方法
 富山産保センターのサービス対象事業場(従業員50人以上)1239社及び富山地域産保センター登録事業場(従業員50人未満)360社を対象として(表1)、25項目のアンケート調査票を送付し、その結果を、事業場規模、心の健康対策必要度、過去の相談・問題事例経験の有無、復職後の職場の理解、産業医の関わり、各部門の連携などについてクロス集計して分析した。

 表1 . 対象事業所の属性及び事業所規模別の回収状況  ( )内は送付先数
事業所の属性 産保センター 地域産保 50人
未満
50〜
99人
100〜
299人
300人
以上
合計
建設業 51
(91)
30
(93)
31 33 16 1 81
(184)
製造業 249
(606)
9
(82)
14 97 103 40 258
(688)
電気・ガス・水道 11
(15)
2
(5)
2 3 7 1 13
(20)
運送業 31
(100)
1
(7)
1 16 9 2 32
( 107)
通信業 4
(17)
0
(0)
0 1 0 1 4
(17)
卸売・小売・飲食 41
(124)
14
(78)
18 15 17 4 55
( 202)
金融・保健業 17
(31)
2
(6)
5 4 7 3 19
(37)
サービス業 96
(236)
12
(72)
13 38 38 6 108
(308)
その他 6
(19)
6
(17)
6 16 13 1 12
(36)
合計 506
(1239)
76
(360)
90 223 210 59 582
(1599)
回収率 40.84% 21.11%         36.40%

3.調査結果の概要

(1)対象事業場の属性及び回収率
1599社に送付582事業場から回答があった。回収率は36.4%(富山産保センター40.8%、富山地域産保21.1%)で地域産保の回収率が有意に低かった。(表1)

(2)職員の配置状況
法的に選任義務のある衛生管理者等を欠いている事業所が26社(5.3%)、産業医を選任していない事業所が39社(8%)あった。常勤・非常勤(嘱託)を含む職員の配置状況は、看護婦98(16.8%)、保健婦51(8.8%)栄養士74(12.7%)、産業カウンセラー15(2.6%)、ケースワーカー23(4.0%)臨床心理士13(2.2%)、心理相談員16(2.7%)心療内科医14(2.4%)、精神科医20(3.4%)であった。メンタルヘルスケアに関わる産業保健スタッフは、看護職は別として、9割以上の事業所で配置されていなかった。

(3)健康づくりの取り組み状況
従業員の健康づくりに取り組んでいる事業所は366社(62.9%)で、健康相談(35.9%)、健康教育(24,9%)、職場体操(18.1%)、職場内スポーツ(6.6%)スポーツ競技会(5.2%)、職場外スポーツ(2.7%)禁煙教室(2.7)で、心の健康対策を実施していると回答した事業所は2社のみであった(複数回答)。
しかし257事業所(44.2%)はメンタルヘルス対策が必要と回答している。なお、従業員規模の大きい事業所ほど「必要」との回答が有意であった。(P<0.01)

(4)心の健康対策・ストレス対策への具体的取り組み状況
旧労働省の「事業場におけるストレス対策の進め方のチェックリスト15項目」に順じたアンケート調査を行った。
心の健康対策・ストレス対策への具体的取り組みは準備中も含めて県内事業所の8割以上で未だ実施されていない現状が明らかとなった。

(5)メンタルヘルス面での相談や問題事例及び現在の休職者の状況
過去3年間にメンタルヘルス面での相談や問題事例を経験した事業所は106社(18.2%)であった。現在、従業員がメンタルヘルス問題で休んでる事業所は29(5.0%)であった。
過去に相談や問題事例を経験した事業所106のうち78社(78.6%)は、心の健康対策が必要と回答し、心の健康対策・ストレス対策の具体的な取り組み状況も有意に実施していた。(P<0.01)

(6)休職者の職場復帰について
復職に際して診断書提出の必要性(図2)、復職社内基準の有無(図3)、及び復職者への職場理解・協力(図4)は下記の如くであった。
図1〜図4を表示する  7割強の事業所で、メンタルヘルス関連疾患休職者の職場復帰に理解・協力があるとの回答であった。

(7)富山産保センター心の相談窓口の利用状況
富山産保センターの心の相談窓口を利用したことがあると回答した事業所は18(3.1%)、利用したことがない438(76.3%)、内容をしらない118(20.6%)であった。
今後利用予定があると回答した事業所48(12.4%)、予定がない194(50.1%)、不明145(37.5%)であった。

(8)産業医の精神疾患罹患従業員の治療や職場復帰にどの程度関与していると思うかとの設問への回答では、精神科医に「殆どおまかせ」が6割を占めていた。

(9)事業所〓健康管理部門〓精神科専門機関(外部)の3部門の連携について、事業所、健康管理部門、精神科専門機関との連携は図5の如くであった。
図5を表示する
今後、精神科専門機関と事業所及び健康管理部門との連携をより密度にしていくことが必要である。

4.おわりに
 県内就労者の3人に2人が職業上ストレスに晒され、事業所の4割強が心の健康対策が必要であると回答しているにもかかわらず、メンタルルスケア担当職員の配置や相談窓口の設置は2割以下で、心の健康対策はいまだ不充分な現状が明かとなった。
 各事業上への専門的アドバイザーとしての役割は無論のこと、精神専門機関と事業所及び健康管理部門との連携のキーステーションとして産業保健推進センターの心の相談窓口がより積極的に活用されることが望まれる。

休職者の職場復帰について 図1〜図4

図5

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