1.はじめに
騒音測定は、高周波の騒音ばかりでなく、振動及びそれによる低周波を測定するものといえる。1996年以来、コンクリートパイル工場の測定を行ってきたが、100Hz以下の低周波測定は不充分であった。とりわけ、職場よりかなり離れた事務所女子労働者に低周波のためと思える不定愁訴の訴えを聞いた。それで、精密なる低周波分析器を整備し、特に低周波特性と労働者の健康実態調査を実施した。
2.対象と方法
旧来より使用する遠心成型機及び振動詰め機を作動する第一工場と、今後主たる生産工程となるプレス式成型機を有する第三工場、及び作業場から離れた本社事務所又は工事事務所の騒音測定を、特に低周波音レベル計リオンNA17を用いて騒音測定を行った。健康調査は事前調査時に作業衛生協会の作成による「自覚症状調査表」を用い調査し面接を実施した。
3.結果と視察
第一工場と第三工場の環境測定は何れも第三管理区分に特定されてえいるが(表1)、1/3オクターブバンド中心周波数別にみた音圧を比較すると、第三口授には著しい低周波の発生がないといえる。(図2)第一工場では、40Hz〜100Hzでは、90dB〜100dBの低周波を認める。(図1)その他の測定店では、20Hzで特異に突出した90dBの音圧があるが、表1のG特性補正値を参考にすると(表2)、作業環境問題としての意義を見出せない。むしろ、問題は高周波騒音は距離により減衰するが、低周波ではかなり離れた本社事務所では、その減衰はみられないことにある。また(図3)、(図4)に見られるように、事務所では道路の自動車騒音が大きな影響を与えている。この事実は、低周波による不定愁訴は単に作業環境測定のみではなく、他の鯨飲も考慮する必要性を示唆している。したがって、測定値のみで、早計に結論を出すべきではない。産業衛生協会の「自覚症状調査表」による訴え率の軽時的変化は、8時より5時にかけて全体として注意集中の困難、身体違和感は略右肩上がりであるが、第一工場は疲労感がやや少ない用にみえる。(表3)これには、労働者の男女比、年齢構成、睡眠不足、耳栓の使用などが関連要因としてあげられる。
第二、第四工場のアンケート調査結果は、第一と第三工場の略中間値を占めている。アンケート調査によるイライラ等の不定愁訴は、肉体作業による疲労と異なり精神的労働者の訴えパターンと近似しているが、低周波によるものと早計に断定できない。他の要因の検討を必要と認める。
(図5、図6、図7)
4.結論
女子職員の不定愁訴により、100Hzいかの低周波測定を行った。旧来の機器による第一工場ではある程度の低周波発生を認めたが、今後主たる行程となるプレス成型機の第三工場はその発生が少なかった。事務所横の国道の自動車通行が女子労働者の愁訴に影響を与えるこおとを考慮して、再度調査を期待する。
表1 作業環境測定結果
単位作業場所 |
A測定 |
B測定
(dB) |
管理区分 |
算術平均値
(dB) |
標準偏差
(dB) |
第1工場 |
91.6 |
2.43 |
94.9 |
第〓管理区分 |
第3工場 |
86.9 |
1.99 |
97.3 |
第〓管理区分 |
表2 G特性補正値
1/3オクターブバンド
中心周波数(Hz) |
1.6 |
2* |
2.5 |
3.15 |
4* |
5 |
6.3 |
8* |
10 |
12.5 |
16* |
20 |
維持に対する補正値
(dB) |
-34 |
-29 |
-25 |
-21 |
-16 |
-12 |
-8 |
-4 |
0 |
4 |
8 |
9 |
備考 感覚閾値とほぼ同じ特性 *はオクターブ中心部
表3 事務所の人々7人女性のアンケート点数の平均値(括弧内は標準偏差)
測定日時
アンケート項目 |
8時 |
12時 |
17時 |
〓 |
5.7(2.1) |
22.8(1.5) |
15.7(1.7) |
〓 |
10.0(1.7) |
14.3(1.2) |
14.3(1.3) |
〓 |
1.4(2.9) |
10.0(3.0) |
11.4(2.5) |
Total |
5.7(2.2) |
15.7(2.1) |
13.8(1.6 |
*(図1から7)は省略