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研究・調査

富山産業保健総合支援センターの調査研究コーナー

平成6年度
労働者の生活習慣と健康度の関係についての実態調査
主任研究者 富山産業保健推進センター相談員  橋本 栄一
共同研究者       〃     相談員  市堰 英之
            〃     相談員  柳下 義男
            〃     相談員  北川 豊子
            〃     相談員  青島 恵子
            〃     相談員  室   一
      富山医科薬科大学保健医学助教授  成瀬 優知

1.はじめに
 今日、各企業で推進しているTHP活動は、単に職場環境と労働者の健康の相関性を追求するばかりでなく、むしろ職場外の日常生活にまで視野を拡大して、健康保持、増進活動に留意することが必要である。その主なテーマは労働者の運動、栄養及び生活習慣の改善といえる。
 職種別死亡率は職種ごとに著しい格差があるため、各企業では個人の生活習慣を考慮にいれて個別的な指導がおこなわれている。だが、個別指導ばかりでなく、更に一歩進んで各業種別の特徴性を包含した集団指導の必要性もある。そのため、本調査は富山県の労働者の生活習慣や健康状態を職種別に明らかにする事を目的とした。

2.対象と方法
 18事業所4,729人を対象にアンケート調査、及び協力をえられた17事業所について、アンケートと健康診断の結果をレコードリンケージを通して、富山県在住労働者の健康習慣や健康度を業種別に検討した。
 アンケート調査は平成7年1月〜2月に行い有効回答は4,524人(95.7%)であった。その内容は各人の業種、労働状況の外に、喫煙、飲酒、運動及び朝食の4項目で健康習慣を検討した。
 このアンケートを基にして、運輸、販売、技術、管理、その他の7分類に解析した。
 更に、平成6年度の健康診断情報とアンケート情報をレコードリンケージして、健康習慣と身体情報の関連を3,388人(71.8%)の成績を得た。
 健康診断場は、全年齢で身長、体重から求めたBMI、血圧値であり、40歳以上では、GOT、GPT、γ〓GTP、コレステロール、血色素を対象とした。
 分析は性別、年齢階級別(40歳未満群、40歳以上群)としたが、女性は調査人数が少なく、製造、事務、その他の3分類とした。

3.成  績
1.職業別健康習慣
(1)喫煙
男子の喫煙率は、40歳未満で67.2%,、40歳以上で58.4%である。運輸の40歳未満は80.9%で一番高く、製造と販売は70%を越している。40歳以上では、節煙して職種間では差がないが、製造では、60%を越え喫煙の悪習が残っている。
女子は、40歳未満で、13.5%、製造は17.2%と高いが、40歳以上では、激減している。
 
(2)毎日飲酒
男子の飲酒率は、40歳未満で22.0%で職種間に差はなく、40歳以上では、30%と増加している。特に、40歳以上の販売は50%近くの高率になっている。

(3)運動
月1回以上の運動実施率は、40歳未満の製造、販売、運輸で23〜27%と少なく、40歳以上では製造、運輸は、15%と低下している。逆に、管理、事務、技術は、実施率は上昇している。
業務上団体労働を主とする職種では、運動する余裕がなく、女子は、予想以上に運動している。

(4)朝食
朝食非摂取率は、男子40歳未満で23%、40歳以上で11%である。両年齢群で販売、運輸は、極端に高く、40歳未満で50%、40歳以上でも30%以上は、食事をとらない。
女子では40歳未満で13%、40歳以上では5%は摂らないが、大部分は朝食を摂っている。

2.職業別健診結果

(1)BMI
職業別にBMIの分布状況をみると、男子では40歳未満、以上の両年齢群に有意の差がみられた。40歳未満では管理、40歳以上では、販売が一番大きく、次いで、運輸の順番であった。

(2)血圧
職業間の血圧分布の相違は、男子では両年齢群に拡張期血圧に格差がみられ、両年齢群ともに事務、管理が高く、次いで、製造の順であった。
女子では40歳未満で事務より製造が、収縮血圧が高かった。

(3)GOT、GOT
40歳以上の男女ともに有意な職種間格差が認められた。男子では両指標とも高く、販売はGOTのみ高い値を示した。
40歳未満の女子は製造が事務に比べ高い値を示した。

(4)γ〓GTP
40歳以上の男子では、前記のGOTと類似な職種間格差を生じているが、販売及び運輸で高い値を示した。



4.結果と考察
40歳以上の男子において、職業、飲酒習慣と健診結果をレコードリンケージして、その関連性を二元配置散分析で検討した。

表1職業、健康習慣、健診結果の分析

業種 健康習慣 BMI コレステロール γ〓GTP GOT・GPT 血圧 血色素
運輸 ヘビースモーカー
朝食抜き
     
販売 飲酒習慣
朝食抜き
運動実施
↑↑  
製造 ヘビースモーカー
飲酒習慣
       
事務 ヘビースモーカー
運動実施
       
管理
運動実施
↑↑  

 この結果、飲酒習慣は、血圧値、GOT、GPT、γ」〓GTPに有意な関連性を認めた。
 喫煙率は、特に40歳以上の運輸は1日20本以上吸う人は7割を越えている。
 毎日飲酒は、販売の49%が目立ち、アルコール性肝障に関係するγ〓GTPも高かった。
 朝食抜きは40歳未満の運輸は62%、販売は50%と高かった。
 県内企業の事務、技術管理の生活習慣は、良好だが、製造は喫煙が多く運動も不足し、販売、運輸は、不規則な生活の人が多い。これらの特徴をふまえて個別的にも、企業の組織としての対応指導が望ましいと言える。

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