熱中症に対する2つの遅れと1つの忘れ
9月に入ると熱中症は激減するが、異常気象で猛暑が続く今季はそうはいかないだろう。8月21日の週間医学会新聞の「ER診療の勘どころ」(徳武雅之医師;健生病院救急集中治療部 ER)に標記の記事が載っていたので、労働衛生関係者にも今後の参考になると思い紹介・解説したい。
その2つの遅れの一つは、「多彩な症状に騙されて判断が遅れる」である。体温上昇もなく一見熱中症とは関係ないような症状も出ることがあるので、いろいろな病名が想起されるが、「暑熱環境にいたかどうか」がキー情報となる。
2つ目の遅れは、「冷水浸漬の手当てが遅れる」である。医療関係者が絡んでくると検査や鑑別診断に時間がとられて、大事な冷却の手当開始の遅延である。冷水であっても氷水であっても体温低下には大差がないし、冷水浸漬が施せないなら一刻も早く、 扇風機に当て、氷・水嚢で頸部/腋窩部/鼠径部を冷却することである。
1つの忘れは、「回復後の指導の忘れ」である。症状が治まると野外の仕事や行事・スポーツなどにすぐ復帰したがることが多い。しかしながら、だからと言ってすぐに暑熱環境に復帰すると、特に高齢者では熱中症の再発や他の持病も含めて重症化することがある。最短でも24~48時間の暑熱環境を回避する旨の指導が必要である。
9月に入っても熱中症に悩まされることであろうが、この3点に留意し乗り切りたい。