【所長のコラム】/鏡森定信

服薬チェックでは点眼薬も ―アイフレイル―

 70歳代の方で、胸に違和感を覚えるようになり近医を受診したら、心臓にペースメーカが必要になるかもしれないと言われて相談を受けた。脈拍が40を切っており徐脈であった。
 服薬について尋ねたが、徐脈を引き起こすようなものは投薬されていなっかった。その後、少し前から緑内障で点眼薬を使い始めていたことがわかった。徐脈を診てもらった時には緑内障点眼薬のことは伝えてなかったという。当人は経口薬だけに気をとられていたのである。尋ねた当方もどんな薬を飲んでいますか?であったから、是非もない。その後それを眼科医に伝え点眼薬を替えてもらったせいか心拍は回復した。しかし、半年後に会った時にはペースメーカが装着されていた。
 治療指針には、「緑内障点眼薬に使用されるβ遮断薬は、心拍数減少作用があり、徐脈のある人には禁忌」とある。また、緑内障者ではその治療前にすでに徐脈の多いことも報告されている。高齢期にあっては徐脈はもともと珍しくない症状である。
 ところで、白内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜変性症に加えてこの緑内障もアイフレイルとされている。高齢期労働の増加、視覚から入る情報量の激増の昨今、労働者の健康管理にアイフレイルチェックリスト(10項目;日本眼科啓発会議、公開)などの利用も必要になってきている。

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