【所長のコラム】/鏡森定信

自転車通勤の効用 ―筋肉は健康関連ホルモンを分泌するー

 各種調査によれば、新型コロナ感染症のパンデミックは、自転車利用を増加させたとのことである。かくいう私も通勤時の公共交通機関の混雑を忌避して通勤にも自転車を利用するようになった。約10km、40~50分程度のライドでアシストなので運動負荷も大したことはない。沿道の風情を楽しみながら風を切って走行するので、大いなるストレス解消である。運動効果を期待する方も多いと思うが、この程度の走行では消費カロリーは大したことはない。骨盤・臀部の姿勢保持筋、骨盤底筋、大腿部と下腿部の伸展・屈曲筋など筋肉鍛錬にはなるが、これとて有酸素運動程度なので、骨盤底筋の排尿トラブル予防には効くだろうが、筋肉隆々は期待すべくもない。ところで筋肉から分泌されるホルモンが近年相次いで確定されている。マイオカインで総称され20種位のホルモンが同定されている。抗動脈硬化、抗炎症、大腸がんの抑制、インスリン様効果などの報告がある。つい最近、富山大学の和漢研の東田教授が、運動不足で骨格筋が萎縮するとヘモペキシンが分泌され、それが血液を介して脳内に移行し、神経炎症を介して認知症発症を早めることを示唆する動物実験を報告した。長寿時代のフレイル予防には、筋肉量を落とさない工夫が欠かせない。

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