【所長コラム】鏡森定信

改めて“衛生”を考える -産業医の機能強化-

 高岡地域産業保健センターの運営協議会で、高岡労働基準監督署の矢郷署長から、本県の平成30年の死亡災害が18人で、前年比7人(63%)と大幅に増加し、製造業や建設業が6割、墜落や挟まれ災害が半数、60歳以上が最多を占め、そして本年4月末までの死亡災害は既に5人で前年とほぼ同じペースで発生しており緊急対策で臨んでいるなどの報告があった。
 墜落は高齢化が関連するが、挟まれは、装置を止めての作業中、他の労働者が稼働させたために起きた災害の類で、装置の自動(ロボット)化の進行によるコンパクト化やスピードアップ化がこれら挟まれ事故につながっているという。装置が尋常に動いている時でなく、装置を止めている非定常時に起きているとの注意喚起があった。
 産業医は職場の衛生管理に携わることを専らとするが、長与專齋が荘子の書からとった生を全うする“衛生”である、死亡災害は主として安全管理の筋であるが、“衛生”を著しく損なう職場の重大事である。衛生工学の専門家と連携した職場巡視が産業医の機能強化の一環として推奨されている。協議会に出席した産業医からの“本日の協議は巡視の新たな視点の啓発になった”との発言は、産業医にも“保健”と“衛生”の差異を再考させるものであった。

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