鉱害にみる塀の内と外 -企業のCSR-
今年はイタイイタイ病の公害認定から50年である。
私自身がイ病に卒業以来関わってきたこともあって、労働衛生の立場からしばしば話をさせられる。被害や対応の歴史を話してきたが、何となく隔靴掻痒であった。たまたま公明党の山口代表から、「ある町の高い煙突」(文春文庫)を直にいただいた。日立銅山が当時は世界最高を誇る156mの煙突を立て周辺の田畑・森林の甚大な煙害を著減した話である。当時は各銅山ともせいぜい50m程度の煙突が多かった。煙害を巡って企業人と住民が厳しい攻防を繰り返しながらも、両者が一致してこれを成したので、本の帯には、「CRBの原点」とある。煙突の高さを決めたり、気象により生産を制御したりするために、企業は逆転層や上空での風速・風向調査そしていくつも気象測候所の設置を行った。日立市天気相談所の所長であった山口代表のお父上からきき、かつて気象台職員でもあった新田次郎が書いた小説なので煙害と気象についても学ぶことが多い。
鉱山内のじん肺多発は、わが国最初の公的職業病対策、外の煙害と鉱毒水害は、大気汚染防止法と水質汚濁防止法として成った。さらに予防として環境アセスメント法も制定された。今日の諸課題に対しても事業所の外にも目を向けた産業保健は、対策そしてCSRに大きく貢献する。