社会的に健康な社員と企業
私は、県立イタイイタイ病資料館の運営に関わってきた。この資料館には開館以来、原因企業である三井金属株式会社の新入社員全員、約数十人が毎年研修に来館している。昨年度はインフルエンザの流行で春に来館できなかったが、年度の終わり近くになって神岡鉱山の視察と合わせてやはり来館している。研修では、語り部がその被害がいかに悲惨であったかを語り、社員は感想文を提出している。
直近のその一つを紹介する。「―――、語り手のみではなく、企業に属する我々も語り継いでいくべきだと感じました。貴重なお話をしていただきありがとうございました」。毎年、感想文には入った企業の歴史を踏まえた上で各自の意見が述べられている。
このごろは健康経営の唱導などもあり、健康診断の受診ならびに精密健診の受診の徹底は勿論、社員食堂など厚生面で気を配る企業は多くなっている。メンタルの面を含めて健康管理の内容も拡充されてきて喜ばしい限りである。
ここで紹介した例のように、あまり触れられたくない事実を含め、その企業の独自な歴史を織り込んだ研修は、即効的ではないが長期的には社会的に健康な社員と会社への土壌になろう。心から賛意を贈りたい。