所長コラム/鏡森定信

生前退位と高齢労働

「・・・二度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが・・・」、今年8月8日の午後3時からの天皇陛下のお気持ち表明の一部である。この表明は、国事行為や内外の各地ご訪問など多忙に活動されてきた陛下の高齢による引退予告とされている。しかし、「国民の理解を得られることを、切に願っています。」の結語は、国民への問いかけのように思われた。高齢による労働(社会的活動)からの撤退のあり方、その後の社会活動の継続をどのように果たしていくかの問いである。多くの国では定年を延期することで対応している。しかしながらフランスでは、年金の被保険者期間が 40 年を満たした者の満 60 歳の定年退職、業界によっては 60歳未満の定年退職などの制度が導入されている。政府が65歳へ定年を延期しようとした際、労働者の「老後を削るな!」との反対デモさえあった国である。
今回の「がん患者の就労支援」は、高齢労働へのサポートとしての意義も大きい。いつまでどのように働き、退き、その後いかに生きるか? 陛下のみならず各自の高齢期の富山発「ケアウイル(平成24年2月所長コラム参照)」が求められている。

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