湯治場で幼児虐待への手当て ー欧州の温泉文化ー
某誌の最近の海外だよりに、ドイツでは国が指定する温泉保養地で健康保険を使い3週間滞在し、幼児虐待のリハを親子が受けられるセラピーが今でも行われているとあった。
ドイツの温泉保養地には地名の頭にBad(入浴)がついているので、その所在を地図上で知ることができる。そこでは伝統的な自然療法であるクナイプ自然療法、すなわち19世紀中葉にクナイプ神父が医師達と共同開発した、早朝の温冷交代浴(水療法)を中心に運動や食事・薬草療法などを組み合わせた健康保険で費用がカバーされる療養が、主にがんの術後や心筋梗塞の入院治療を終えた人々に提供されている。その発祥地で、ミニュヘン近郊のBad・Wörishofenを20年前に初めて訪れた。その際、幼児虐待の親子へのリハが、広々としたグリーンの庭に小径を挟んで建つ数十部屋はある2つの滞在棟に親と子を分離居住させ、保養地に整備されている保養パークや森林ウオークなども利用し、適宜親子一緒のセラピーが行われていたのを見聞し大変驚いた。通常これらの保養地では、水療法室(温泉とは限らない)の他に、地産地消の食材を使用したこの療法では重要な朝食処、水中ウオークや水泳のためのプールなどは、適度な規模の各保養ホテルではいずれも整備されている。水療法は早朝に行われるので、近所に住む女性が認定水療法士として働いていることが多いという。また、散策路、音楽や観劇を楽しむ小さなホールも保養地にはある。往時は保険で4週間の滞在費がカバーされていた。順応に最初の1週、本格的セラピーに2週、日常生活への戻りへの準備に1週は、わが国の湯治と同じであるが、財政難から現在は3週間になっている。羨望大だが、Baden・Badenのカラカラ浴場などを筆頭に、日本のスーパー銭湯を模した温浴施設がドイツに多く出現しており、わが国の銭湯文化も捨てたものではない。