【所長のコラム】/鏡森定信

熱中症は暑熱関連死の1%程度

 気象庁は今年の夏は平均気温が平年と比べて1.76度高く、調査開始から去年と並び過去最高に暑い夏であったことを発表した。当然ながら熱中症の発生もそれに影響された。
 しかしながら猛暑の健康影響は熱中症だけではない。本多 靖(保健医療科学.2020)は、“日別の死亡リスクが最低となる気温(=至適気温)を基準として、それより高気温になった場合の死亡の増加分(過剰死亡)では、心血管疾患、糖尿病、精神疾患、喘息などの基礎疾患の悪化、事故や一部の感染症によるものが多く、熱中症の占める割合は 1 %に満たない。”と指摘している。これを踏まえれば、暑熱関連死が高齢者に多くなるのは当然の帰結である。
 ところで、この増加に転じる気温としては、北海道では23~28℃、東京では28~33℃、沖縄では33℃以上であり、この差異は暑熱順応によるためで北海道では低く沖縄では高い気温になるものと推測されている。この増加は夏の前半で高く後半で小さくなるという。これには個人差があるし、外国人労働者の出身地の考慮も必要になろう。
 かつて、夏の真っただ中に上海に滞在中、午後2-3時と記憶しているが、一斉に警報サイレンが街中に鳴り響いたことがあった。猛暑のための勤労中止の知らせだった。今にして思えば、同じ中国でもサイレンの始動は南では高く北では低かったのだろうか?
健康影響には湿度の違いも影響するが、暑熱関連死に対しては気温に比べて影響が小さいという。
 労働衛生における暑熱対策では、新たな知見に沿って益々多様な展開が必要になっている。

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