希望、仲間、体験知でつながるがん患者自身の相互支援の団体「5years」
文芸春秋6月号、“フロンテイアに挑戦する第一線の医師たちが語る最新医学;がん先進治療ここまで来た!”では、国立がん研究センター等が取り組んでいるがんの遺伝子検査や最新治療などが分かりやすく説明されていた。それはそれで大変有益であったが、その最終章に、「患者2万人の本当の悩み」のタイトルで標記の市民活動に刮目された。かなり進んだ精巣がんから生還した男性が、現在2万人を超えるがん患者・家族などが参加する会を2015年に立ち上げた。その理由として、がんになった一般市民が、どんな治療を受け入れ、どんな困難を経て回復し、どう社会生活に復帰したのかなどの情報が、闘病生活者の将来への希望、孤独感からの癒しに大いに助けられたことを挙げている。
また、米国ではこのような団体を医師から紹介されることを知ったのもその契機になったそうである。
今日、臓器別のがん患者・家族の会や有名人のがん闘病記などはずいぶんと多彩である。しかし、この組織は、臓器を特定せず一般市民のがん患者自身による相互支援を目的に、相談、経験知によるアドバイスなどをネット上で提供している。直近では、後遺症としての痺れ、会社や同僚のへの告知、孤独などが具体に取り上げられており、個別相談は理事会で選択して公開し、回答者をネット上で公募される。参加者5万人を目標にしているそうである。参加し私も試してみたが、ここまで大きくなると心の通った支え合いがタイミングよくできるのかが気になった。そうではあるが、産業保健の今日的課題である「就労と治療の両立」に携わる我々にとって、ネットでアクセスできるこのような組織は注目したい社会資源である。