震災後の健康管理 ―産業保健の一つの視点―
歴史的な能登半島地震でした。大震災だったので事業所がらみでも被災による死亡や避難で直接あるいは間接的に大きなストレスを受けられた事業所や個人がおありだと思います。大震災後のPTSD(心的外傷後ストレス障害;その時の体験や記憶を思い出したり、夢に見たりすることが続き、体調を崩し日常生活にも支障が出る)は多くの人々を襲い、2年余り苦しむ場合もあります。われらの機構の電話相談でも今震災後に不安や睡眠障害などが多く寄せられています。停電・断水などライフラインの復旧で懸命に作業する人たちの健康影響も危惧されます。高血圧や糖尿病など循環器疾患の過剰発生への対処とともにPTSDについても留意が必要です。今回被害にあった県内のある事業所では社員のPTSDのアンケート調査も実施し対応を始めています。
阪神淡路大震災時の西宮消防署のPTSDの追跡調査では、直に惨事の事案に遭遇した署員(高暴露群)では震災後3か月以内の約6割の発生から元の戻るまでやはり2~3年かかっています。次いで多かったのは署内で主に指示を出す管理職たちの待機組で、低暴露群より多く3か月以内4割で元に戻ったのは2~3年後でした。現場組をサポートする側にもPTSDが多くなる、災害時の産業保健で留意したい視点です。PTSDには特定の対処マニュアルはなく工夫が必要ですが、苦難にあった人に寄り添う心が基本とされています。県内にも被害が及んだ大惨事であり、本県の産業保健にとっても試練の時期が続きます。