【所長のコラム】/鏡森定信

ポストコロナ時代 ―巣ごもり、地域ごもりー

 今回の新型コロナウイルスのパンデミックは、人流が病原体の拡散にいかに大きく関わるかを実感させてくれた。国際的には外国人観光客の一層の増加のインバウンドや限界集落の地域活性化を外部からの交流人口の増加を旗印に、経済の活性化(成長路線の追求)を指向してきたのが裏目に出てしまった。ポストコロナでは、マイクロツーリズムや定住人口を踏まえた丁寧な地域づくり(地域ごもり)を指向した方向に振れるであろう。また、テレワークやオンライン会議のIT化の一層の普及で移動の負担が激減し、働き方改革も思わぬ点で新たな展開がみられた。テレワークに限らず、ゆとりを生み出したこの現代の巣ごもりも大切に育てていく必要がある。
 外部に求めるばかりでなく、地域・職域の人やモノはもちろん、その有する資源に一層目を向け、自ら考え対応していく姿勢の地域・職域づくりが求められる。このような裏打ちがなければ、進行する国際化も実に脆弱なものになろう。流行病の蔓延に限らず、警鐘されている天候の激変や地震などの大災害時における備えとしても大変重要な課題である。
 SDGsがいずこでも唱道されているが、ここに掲げられた事項を凝視するとき、家庭、地域、職域などにおける子育・教育や仕事の確保、福祉・医療や防災の手立て、自然や文化の保持といった実のあるコミニテイの公共財が経済成長より大切なものであるように見えてくる。

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