【所長のコラム】/鏡森定信

自転車配達員の労災加入OK

 この9月からフリーランスで働く自転車配達員やITエンジニアなども労災保険に加入できるようになったのを標記のタイトルでHC新聞が伝えていた。労災は保険料を企業が全額負担し雇用労働者を対象にしており、事業主には「特別加入」はあるが、これまでは建設業の一人親方や個人タクシー運転手など病気のリスクが高い一部の業種に限られていた。じん肺審査医を長く務めたが、事業主で審査したのは石工の親方くらいであった。
 しかし、この4月には芸能従事者やアニメ制作者など4つの業種が追加され、9月からは「ウーバーイーツ」などの自転車配達員、システムエンジニアやウエブデザイナーといったITフリーランスも加入できるようになった。HC新聞には、自転車配達員が配達中にケガをして10日間休んだ例が示されていた。労災給付の基礎である賃金を一日5000円とし、適応される保険料率1.2%(この率は3年ごとに見直されるが、平成30年は最高が鉱業の8.8%、最も低率なのは小売業や飲食店で0.3%)で、年間保険料支出は2万9800円、治療費の全額と10日間の休業補償(賃金の80%)で2万8000円が給付となる。保険料に近い金額が支給されたことになる。
 個人事業主の人にとっては、大事なセイフテイネットである。社会保険労務士が詳しいので相談があればコンタクトされたい。働き方改革で、副業を含めて多様な就労形態が唱道されているが、生活防衛のためにも多様なセイフテイネットの整備が必須である。

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