病歴は個人情報保護法で規定されたプライバシー
「人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・犯罪被害の事実」が要配慮個人情報として個人情報保護法に定義されている。ここに健康管理できわめて重要な病歴が含まれている。このように法で規定されるまでは、B型、C型肝炎やエイズといったウイルスの伝染病の場合に本人のプライバシーと公衆の安全の間で葛藤した経緯がある。病歴には特定の疾患の枠はない。以下にこれに至るまでにたどった裁判の一例を紹介したい。
過重労働でうつ病と認定された事案で、それ以前のうつ病の治療歴を会社に報告しなかったことに対する最高裁の判断(第二小法廷判決;平成26年3月24日)である。
最高裁では、「病名や処方薬は原告のプライバシーに属する情報であり、人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく、就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった」とし、必ずしも労働者からの申告がなくても、会社は安全配慮義務を負っているのであって、過重な業務が続く中でその体調の悪化が見て取れる場合、労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提に、必要に応じて業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努めるべきだと判断された。
判決は病歴を報告しなくていいと言っていないが、プライバシー保護と信頼関係が、産業衛生でも一層重要になってきている。