“患者さん”から“患者さま” -感情労働への対処-
我がセンターの相談員で、元富山県立心の健康センター長の數川 悟精神科医が、「なぜ“援助者”は燃え尽きてしまうのか」(南山堂)をこの8月に上梓した。人とのメンタル的トラブルでそれに関わる専門職までも“燃え尽きる”のを数々みてきた氏が、それへの対処を実践的に提示している。
人との関係でメンタル的ストレスが多く、感情の露出を抑え平常心で勤めなければならないのを“感情労働”というそうだが、氏は、患者を“さま”で呼ぶようになったことで、感情労働のストレスは増大したという。人の繋がりが強い医療で、医療サービス(物)を切り離し、その受け手として“お客様”にした結果、神様となり何事もまかり通る土壌をもたらした。
当然クレームが高じ、暴言、時には暴力沙汰までに及ぶ。恐怖、怒り、不安、自責、意気消沈などに、労働者個人としては、“エモーショナル・リテラシー(メンタル的ストレスへの対処法)”、職場としては情緒的支援(カンファランスなどによる同僚の支援や研修の実施)の有効性が強調されている。医療に限らず“感情労働”が増大する昨今、それへの対処が一層大事になっている。