ステータス症候群 -社会格差という病気-
今月、大阪で開催のG20の関連行事として、医療サービスをいかに社会に広く提供するかについてのカンファレンスがある。
その冒頭で、ステータス症候群(邦訳;橋本、鏡森監修、日本評論社)を上梓した、元世界医師会会長も務めたマーモット卿(ロンドン大学)が、健康の社会的決定要因として講演する。彼は米国に移民した日本人の脳卒中から心筋梗塞、胃がんから大腸がんへの変遷を疫学研究で示し注目を浴びた。その後英国に移り、ロンドンのホワイトホール(日本の霞が関)で働く人たちの健康がその職位(ステータス)によって著しく差異のあることを追跡調査で示した。ストレスチェックでも取り上げられる職場での各自の自立性(コントロール)やつながり(サポート)が大切なことを明らかにもした。一定の物質的豊かさに達した社会でも同様なことが言えるというのが彼の研究結果である。自律性、すなわち自分の人生にどれだけのコントロールを持てるのか、そしてどれだけ社会とつながりを持って生きる環境にあるのか、この二つが、WHOの定義する健康に欠かせないと説く。この二つに不平等が大きくなることに警告している。それは、信頼の欠如・犯罪や殺人事件さえにも影を落としており、たとえ物質的に豊かでもこの不平等が大きければ何処でも同じ結果を生むことも実証されている。