【所長コラム】鏡森定信

両立支援は産業医に癌の専門知識を求めるか?

  -総合支援センターの専門性-

 この4月に総合支援センターの所長会があった。最後の質疑応答の時間で、産業医の多くは癌の知識が不十分なので両立支援事業に不安を覚えるとの発言が複数あった。その不安はもっともであるが、そこは総合支援センターが主治医や事業所そして関連機関とのネットワーク力を発揮して乗り切ることで対応していくことが本来の役割であろう。産業医は事業所の主治医であり、その主治医は専門的治療者との連携のネットワーク無しでは務まらない。このような産業保健領域で仕事をする際には、特定の分野の専門医であることよりは産業保健の総合医であることが求められる。両立支援の次の課題として脳卒中が挙げられている。傷病ごとに専門的知識を求めるのであろうか。このようなことはストレスチェック制度導入に当たって、一部の産業医が、事業所のストレスである過重労働、各種ハラスメントなど事業所の労働医学的環境への対応ではなく、精神医学的対応に向かったのと同じ傾向で誤りである。

 富山では、「事業主とコミュニケーションの取り方」の研修会を各地産保で行っている、予想した以上に受講者が多い。長年、産業医活動をされている2名の相談員経験者が、“職場巡視の実際”、“事業主のみならず管理者層や一般労働者との付き合い方”で話題提供してもらっている。多忙で複雑化する産業保健現場、研修会の内容においても一層の工夫が求められていると自省している。

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