【所長のコラム】/鏡森定信

治療と就労の両立支援における産業医の役割

当面はガンについて両立支援制度がスタートした。再度、産業医の役割で混乱が生じないか気がかりである。今夏の産業医制度の在り方に関する検討会で出た意見を要約する。「――― 今の安衛法の62条も身体障害者などを中心になるべく適材適所を職場で図るようにと書いてあり、民事でも健康配慮を求める判例が多く出ている。とはいえ、何でも事業者や産業保健スタッフに求めればいいというわけではない。判例をみると、専門性と民主性を核とした手続的が肝要である。専門性とは、専門家に意見を聞くことで、主治医は疾病性を、産業医は、疾病性を踏まえた就労の確認をするとこと、民主性とは、その職場で関係者が本人も含めて対応を協議するということ。絶対の正解がないので、手続は果たしてくださいということ。―――」、産業医に求めているのは、当該事業所の職場ストレスに対する見識でありストレスチェック制度と同様である。

国の委員からは、「―――今年度の下旬から来年度にかけて、ガン関係の主治医が、所定の労働者情報票が来て具体的な就労のための条件が書けるようにテキストをつくり、当面はがん拠点病院約400に対して、院長、担当の方に説明し、出前出張的な形で研修を進めたい。ガンが先行しているが、他の疾病でも行っていき、疾病を抱えた方が、就業上の措置に関するコメントをもらい、事業場と連携できるような体制を健康局等とも進めているところ。―――」との発言があった。

産業医の役割が増大している。それに応じた医学的・社会的支援体制の構築が急がれる。

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